2005年の夏、ふと駅前の本屋に立ち寄ると、「13歳のがん闘病記」の文字が目に飛び込んできた。小さなポスターだった。
手に取るとすごく薄いのに千円もする、文字も大きくてすぐ読めそうだ。ただとても綺麗な表紙とイラスト、それにカバー裏の瞳ちゃんの写真が、驚くほど可愛かったので、立ち読みすることにした。
財布の中身は、家までのバス代160円しか入っていなかった。
全て読み終えるのに、30分もかからなかった、あっという間だった。そして私は思いがけないほど感動しいていた。
家まで飛んで帰り、妻に頭を下げ千円と往復のバス代をもらう、その当時は病状が安定せずに、余分な現金を持たせてもらえなかったからだ。
経済的に非常に困窮してした時期だったので、千円の本は私に取っては高価な買い物だったが、何としても手に入れなければ、との思いが強かった。
小学校6年生での「余命半年」のがん告知、右大腿骨骨肉腫、スポーツが大好きな少女は、右足切断の決断を迫られる……。
本書のメインは、青少年弁論大会で発表された、瞳ちゃんの作文「命を見つめて」である。死の2ヶ月前に書かれた、この作文、命の讃歌である。
常に病と闘い続ける人が、一番輝いていたと、彼女は知っていた、それを伝えることが自分の使命であると……。
そして巻末に付された、彼女の残した黄金の輝きを放つ言葉たち。
読む人全てに、勇気と希望を与えてくれる、どんな病にも効く万能薬、「瞳スーパーデラックス」を、彼女は残してくれた。
残された私たちは、自分自身の生について、もう一度よく考えなくてはいけない。
「私、世界で一番幸せ」
瞳ちゃんのように、こう言い切れる人は、果たしているだろうか?
ぜひ、ぜひ一読を!