希 Keyboard 夜話 第五夜

「文章を編む快感」

 そして愛用の無料日本語FEP、「WXP」が満を持して製品版として登場した! その名も「WX II+」! (無印の「WX II」は J-3100 に対応していなかった)

 日本語入力の全ての機能、操作にキーボードショートカットが自由に定義でき、辞書も空辞書を作り一から手作りで育てていくことのできる、まさにフルカスタマイズ可能な、当時としては斬新な FEP だった。

 フルカスタマイズ可能な両ソフト、テキストエディタ「VZ editor」、日本語入力FEP「WX II+」。この二つを使用する頻度の低い機能を排除する形でカスタム、徹底的に両ソフトの操作感、ショートカットキーを対応させた。

Control + m = [Enter]
Control + h = [BackSpace]
Control + g = [Delete]
Control + i = [TAB]
Control + u = [Undo]
Control + e = [↑](変換候補移動)
Control + x = [↓](変換候補移動)
Control + s = [←](文節、キャレット移動)
Control + d = [→] (文節、キャレット移動)
Control + a = [Shift] + [←](文節長 -1)
  <編集時>[1Word Left] 
Control + f = [Shift] + [→](文節長 +1)
  <編集時>[1Word Right]
Control + r = [PageUp](変換候補頁移動)
Control + c = [PageDown] (変換候補頁移動)
Control + j = (ひらがなへ変換)
Control + k =(カタカナへ変換)
Control + l =(半角英数へ変換)

 基本形はこの様な形で仕上げた、このキーレイアウトは現在でもそのまま使用している。

 ここに「親指シフト」が加わり、日本語入力に関するストレスは、ほぼなくなる。

 そんなある夜、寝つけずにいた希はおもむろに起き上がり、「DynaBook」を寝床の上に置き、ドカッとあぐらをかきポチポチとキーボードを押し始めた。そのまま 2時間集中し一気に文章を書き(打ち)続け、気がついた時には短編小説が一作でき上がっていた、その 2時間の間は、自分の頭に浮かんだ文章が、ダイレクトにディスプレイに表示されていた、世界には文章を考える脳と、文章が表示されるディスプレイと、その文字を追う二つの眼だけが存在していた、はっきりとそう感じた。このとき文章を打つ指先と、それをコンピュータに伝え続けるキーボードは、存在していなかった。あの感覚、快感は OS が GUI になり、ハードディスクが主流になり、FEP が IME になり辞書は肥大化し、「VZ editor」も WX シリーズも消え、もう味わえなくなってしまった。

 ただ「親指シフト」だけはいつも私の指先に……。

希 Keyboard 夜話

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